母親から子供に感染する経路には、子宮内感染、周産期感染、出産後感染の3種類が考えられますが、それぞれの割合がどうなっているのか,未だにはっきりしません。
胎児の体の各部分からウイルスが取れたという報告もあり、臍帯血にウイルスが見つかったという報告もありますが、感染の主役が子宮内感染であるという証拠はまだ得られていません。とくに出産時には、多かれ少なかれ母体の血にまみれますし、児の体表には小さな傷ができますから、出産時に感染する可能性もあります。帝王切開により、母体血による汚染を防ごうという試みもされましたが、あまり成績は芳しくないようです。
母乳哺育児は感染率が高く、とくに出産間際に感染した母親が母乳哺育をすると感染させやすいという報告もあります。
開発途上国では、約50%という数字がでています。一方、先進国では約20%という数字がでています。先進国ではほとんど母乳感染の可能性が教育されているため、キャリアの母親は人工栄養を行っています。その差がでているのかもしれません。
一方、子供が大きくなるまで追跡すると、母乳哺育をしても、しなくても、感染率は変らない、という報告もどこかで読みました。もしこれが本当なら、これまでにあげた3種類の主要感染経路以外にも、家族内の感染経路があることになり、重要な報告です。
母子感染による子供は小さいうちにエイズに陥ります。重症の例が多く、早期に死亡してしまうため、母子感染が重視されているのです。40%の国民が感染しているような国で、50%に母子感染がおこると、子供の20%は、エイズのため幼児期に死亡することになり、国が成り立たなくなるのは目に見えています。
妊婦のHIV感染率
アメリカのある州の妊婦検診のデータから、分娩前にエイズを起こすヒト免疫不全ウイルス(以下HIVと略称する)に感染している妊婦の割合を調べました。1993年の数値では調べた
68%の妊婦がHIV陽性でしたが、その3年後の1996年に調査した妊婦の
81%がHIV陽性にまで上昇していました。この内当該妊娠前からHIVが陽性と判明していた妊婦は実に
52%であり、当該妊娠中にHIVが陽性と判明した妊婦は
48%であったそうです。私には一寸信じがたいのですが、なんと恐ろしい数値ではありませんか。
分娩前にHIV感染が判明した母体と新生児が約1000組も見つけられたので、エイズの治療薬として有効な抗レトロウイルス剤であるAZTの投与をエイズの発症を予防する目的のカウンセリングをした結果、AZTの投与を受けた割合は1993年には
27%でしかなかったのが、1996年では
85%にまで上昇しました。AZTの投与を受けなかった妊婦の大部分は、妊婦検診を定期的に受けなかった妊婦であったそうです。
| |
感染確率 |
感染者の割合 |
| 輸血・血液製剤 |
40〜90% |
3〜5% |
| 母子感染 |
30% |
5〜10% |
| 性行為 |
0.1〜1% |
70〜80% |
| 注射による感染 |
0.5〜1% |
5〜10% |
| 医療従事者 |
0.5%以下 |
0.01%以下 |
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